八木重吉の詩

八木重吉の詩を読むと「秋の詩人」だなあ、とおもいます。

今日はその中から抜粋したものを紹介しましょう。

 

 こういうくらしができたなら

平凡のようで平凡ではない

よるは うつくしいゆめばかりをみて

なんのおもいもなく

ただありがたきにみちてあさをむかえる

すべて  きょうのひとひは

秋のひに けやきがすくすくと野にたつように

ひとすじに まじりけなく

じぶんのこころと身をひとつに統べて

できるかぎりのことをけんめいにしたい

ありがたさのおもいのかげに

すべてをひとつにささぐるねがいをかきいだいて

きょうのひと日をあゆんでいき

ゆうがたをむかえたらば

きょうすごしえたるを 手をあわせておれいをもうしたい

    〇

秋のこころ

 

水のおとが きこえる

水の音のあたりに胸をひたしてゆくと

ながされてゆくと

うつくしい世界がうっとりとあかるんでくる