調理の原典は「典座教訓」

式包丁という尊い調理の儀式を初めて目の当たり拝見することができました。我が国において

調理の精神とか食材の取り扱い方とかの具体的な指南をしているのは曹洞宗開祖である
鎌倉時代の道元禅師であります。38歳の時に著述された「典座教訓(てんぞきょうくん)が

それです。そこには食卓に備える食材の吟味の仕方から、その取扱い方、主食である
米飯にいたるまで微細な留意点を指摘しながら、禅の巨匠たちが料理長の役目をしながら

修行工夫をした事例を懇切に説明しています。その内容は実に細やかであり、親切心の
行き届いたものです。調理と修行とは一見すると無関係のように考えがちですが、禅師に

よれば、けっしてそうではなく有力(うりき)の修道者でなければ勤められないとても大切

な職分である。おろそかにしてはならぬ、と強調しております。今回の「式包丁」を拝見

して「なるほど1200年もの歴史を連綿をして守り続けておられる料理人の伝統が今日

でもなお現存しているんだ」と思いしらされました。講師の米良隆先生も「典座教訓」に
教えられたといわれましたが、さすがに一流ともなると教養が違うと感じた次第です。