「獅子窟半稿」を拝読する

「獅子窟半稿」が届いた。これは故曹洞宗大本山永平寺専門道場の後堂老師による漢詩の遺稿
である。老師は大正12年生まれ。小生が本山に修行に上がったのは昭和48年で、その当時の
老師は維那(いの)の役職に就いておられ、雲水の指導に余念がなかった。

それからしばらく年月がたち、わたしが本山の単頭に就任中に後堂老師として再安居(さいあんご)
されたのが平成10年だったと思う。わたしの小僧時代の恩師がこうして後堂と単頭として雲水諸君
の教育に従事したのもそれなりの法縁があったからかもしれない。

後堂老師とその下職の単頭は坐禅道場における教育の実質的指導をまかされる。わたしが書道を

するきっかけは本山修行当時までさかのぼることができ、20代半ばのわたしは本田老師の墨痕
鮮やかな書に魅せられた。「獅子窟半稿」は漢詩のみで、老師が得意とした書の数々に触れられ
ないのは残念至極。しかし、こうして在りし日の老師の面影を髣髴させる漢詩を読めるのは嬉しい。

本山でお互いに漢詩の添削などをし合って道縁を深めていた頃が懐かしく思い出された。

衲僧行季要参禅   のうそうのあんり 参禅を要す

新学古風誰与伝   新たに古風を学んでたれにか伝う

一片工夫三昧底   一片のくふう ざんまいてい

法王之法気衝天   ほうおうのほうき てんをつく