吾道一以貫之

「吾道一以貫之」(吾ガ道一以テ之を貫ク)は有名な御であるが、この一貫、一貫持続ということが

人間の信念・意志の問題となり、夢の御能く、また慌しく過ぎ去る日常にあって、確かなるもの・
拠りどころ・安心充実を得る秘訣である。毎日でなくとも、週一回、月一回でも、或る事を万障を

排して続けて行けば、顧みて”たのみありけり”の充実感を味わうことができる。長年続けて来た

ことが自分の心の頼り・支えとなる。またそれから種々の関連が生まれてくるのである。根・幹
から枝葉が必然的に生じてくる如くに。

一貫持続のためには、まさに万障を繰り合わせねばならぬ、多くの事を否定してゆく苦痛を
偲ばねばならぬのである。興味の趣くまま、他から誘われるままにいろいろの事をやっていると、

その当面したときは生き生きとしているようでも、結局ははかないものtの嘆息だけが残るであろう。

「一貫」のよって、真の自主性も得られるのであり、内面性も得られる。時の流れを超え、時の流れ

を自分の内面の必然性に従って生み出すことも出來るのであろう。人間の性格にて、この一貫持続

に心掛ける人と興味の動くままに種々に気を散らす傾向の人とが分かれてまさに対照的である。
これはまた徳の人と才の人との相違でもあろうか。(「楠葉だより-自然と人生-」木南卓一著)