『鶴巣集』を読む

『鶴巣集』を読む

「鶴巣集」は幕末明治に大活躍した原坦山老師の法語集です。老師晩年は初期の東京帝大で
佛教思想を学生たちに教授しましたので学僧として知られています。宗派を超えて尊敬を集めた
わが曹洞宗を代表する傑出した禅僧でした。

今回はその法語の一部を紹介します。

一にはすなはち人天の教え也。二にはすなはち三乗の学也。三にはすなはち佛祖の証契なり。
方今吾子の病は信力堅からざる処に在り。心操軟弱の処に在り。情識を脱せざる処に在り。
聡明虚飾の処に在り。已に是れ恁麼にして恁麼にし去る。恐らくは大事を了するに勝えず。
今且らく別れに臨むが故に之を送るに規言を以てす。(原漢文)

この法語は最後の住職地であった小田原の道了尊で有名な最乗寺を去る時の最後の教え
でしょう。禅僧の一大目的は生死を明らめることですが、現在は檀家のつきあいをしながら
生活の安定を図ることで頭が一杯の和尚たちが巷にあふれています。

小生もその例外ではありませんが・・・。

こうした先人の教えに触れると、自身の軟弱な根性を奮い立たせてくれます。有り難いことです。
 

曹洞宗の名刹小田原の最乗寺