金言落穂抄

淡とは至極の味

「淡」という字を普通の人はこれろ、単にあわい、あsっさりしている。みずくさいというような意味に考えて、じつは全く正反対の味のある文字であることを知りません。・・・人間というものは、甘味だけの青少年時代から出発して、やがて苦味の出る壮年時代、さらに渋みの出てくるまでを考えますと、かなりの年月と修養が必要であります。がこれだけではまだ最高の境地・真の味とは言えません。この三つの味、すなわち甘・苦・渋を超越した至極の味、至極の境地を、老荘や禅家では「無」あるいは淡という字で表現しております。・・・。

安岡正篤著「先哲講座」より

幸田露伴先生の'ひとり言'

世にありて財を保ち身を安くせんとするは、大空にただよへる雲を釘付けにせんとするが如し。

喩えが秀逸ですね。いろいろと考えさせられます。5月8日記す。

謡曲「巻絹」

夫(そ)れ神は人の敬ふに依って威を増し 人は神の加護によれり

最近読んだ「巻絹」(まききぬ)のなかから感銘を受けた文章です。神さまの存在の有無を哲学的にいくら究明しようとしてもその存在は未解決のままのようです。それよりも真心をこめて神仏に祈りを捧げればそれに応じた答えやらヒントのようなものが得られるということはそれを感得した人にとっては、これほどの答えはないでしょう。われわれが神仏を尊んで敬えばそれに応じた神仏からの有形無形の加護があるというのは古来多くの人達が実感しているようです。それは単なる神頼み以上の深い人間の精神的営みといえるものなのでしょう。4月1日記す

遺教経の教え

蜂の華を採(と)るに、但(た)だ其の味わいのみを取って、色香を損せざるがごとし

 釋尊最後の説法を経典にしたといわれる、遺教経の一節。比丘が托鉢したりして、施主から飲食物の供養をうけるさいは病人が薬を飲むように、すこしの量にとどめなさい。という段の喩えに出てきます。ミツバチがミツを採ろうとするとき、それ以外の花の色や香までも欲張ってとろうとはしないであろう。食べ物も欲張って必要以上におおくとるべきではない。そういう意味です。しかし、この言葉はそれとは離れて単独で味わっても良いとおもいます。 遺教経のなかでもわたしの好きな文章です。

法句経

ことばをつつしみ  意(おもい)をととのへ  身に不善(あしき)を作さず  この三つの形式(かたち)によりて  おのれをきよむべし  かくして  大仙(ひじり)の説ける道を得ん

 

法句経はいわば仏教の「論語」というべき人生書です。短い文章には人生の深い叡智が随処にちりばめられております。ときどき眼を通されると良いでしょう。

正受老人の教え

一大事と申すは、今日ただ今のこころなり。それをおろそかにして翌日あることなし。すべての人に遠きことを思いはかることあれども、的面の今を失うにこころつかず。

正受老人は白隠禅師の禅の師匠です。厳しい接得で知られた禅者ですが、世間一般の人にはやさしく禅の生活の要諦を説き示されました。その一例が今月の言葉です。今日一日をそまつにして明日のことを思いわずらうことのないようにというのです。親切なやさしい言葉に深い含蓄がありますね。

安積艮齋人の詩文を称す

安積艮齋は、人の詩文を来り示すものあれば、必ず之を稱揚す。其の拙劣にして読むに勝へざるものは、其の手跡を稱揚す。詩文手跡共に拙劣なるものは、其紙を稱揚して曰く、眞に好紙なりと。

桂月曰く 妄りにけなせば、恐れ、怒り、萎縮し、絶望す。何か長所を探し出して之を揚ぐるが、先進者のつとめ也。

 吉田松陰も幕末の儒者艮齋(ごんさい)先生の門下生でした。

法句経のことば

「誹(そし)らず  害(そこな)わず  戒(いましめ)におのれをまもり  食(かて)において量(ほど)を知り

閑(しづ)かなる所に坐して  しかも易きに住せざれ」と、かく諸仏(ほとけ)は訓えたまふ

霧の中を歩めば、覚えざるに衣湿る

「霧の中を歩めば、覚えざるに衣湿る」

 曹洞宗開祖道元禅師の言葉

 

正法眼藏随問記にでてくる有名な文章です。これを牛尾次朗さんがその著書「わが人生に刻む 30の言葉」で紹介しております。人生は出会いの連続である。そのことの大切さをこの言葉で教えられたといいます。

7月4日記す

中也者。天下之大本也。和也者。天下之達道也。

中也者。天下之大本也。和也者。天下之達道也。(中なるものは、天下の大本なり。和なるものは、天下の達道なり。)

中庸(中国の古典)より


喜怒哀楽未だ発せざるを中と謂うが、それは中が方寸の中にあると云う意味である。
・・・方寸の中というものは、太虚の本体と同じものであり、天地万物の生れ出る太虚と同体のものである。それで中は天下の大本で、人天同一である。・・・喜怒哀楽の発せざる心の根本がそのまま宇宙の根本で、宇宙の根本は自分の根本で寸分の違いもない

西晋一郎著「藤樹学講話」抄録
 

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