八木重吉の詩
八木重吉は季節でいえば秋の詩人といえるのでしょう。
それらの詩はどれも短く、透明で純粋なまなざしの表現です。若干29歳の
若さでした。結核であったことも原因でしょうが、惜しまれる
人生でした。
障子
あかるい秋がやってきた
しずかな障子のそばへすりよって
おとなしい子供のように
じっとあたりのけはいをたのしんでみたい
〇
なすべきものはなにか
ひとすじのみちはなにか
すつるのでもよい あつめるのでもよい
けっきょくすなおなこころはほれぼれさせられる
〇
響
秋はあかるくなりきった
この明るさの奥に
しづかな響きがあるようにおもはれる
〇
秋になると
ふとしたことまでうれしくなる
そこいらを歩きながら
うっかり路をまちがへて気づいたときなぞ
なんだかころころうれしくなる
〇
うつくしいものはかすかだ
うつくしい野のすえも
うつくしいいかんがえのすえも
すべてはふっときえてゆく