『身延行記』を読む
大阪の寺院での坐禅会に出かけました。車中で読もうとこの和本をバッグ
にしまい込み、ぼちぼち読み始めました。著者の元政上人は江戸初期の
日蓮宗の大徳としてあまりにも有名な方です。『身延行記』はその上人が亡き父の
遺骨を身延山に埋骨する目的で綴られた旅すがらの紀行文です。
旅日記ですが、上人得意の和歌あり、漢詩ありと同道した母親への孝心がみごとな
名文で綴られています。
中でも、霊峰富士を眺めたときに記した漢詩には感動しました。
碧天雪は白し 白雲の間
走卒児童も亦顔(かんばせ)を仰ぐ
東海初めて遊ぶ多少の客
富山は敢て何(いず)れの山ぞと問わず
この漢詩の意味は「碧空に漂う白雲の中に更に白く雪の不二が顔をだしている。
その秀麗なる容姿には、心なき走卒児童も之を仰いで見ることである、而して
又初めて東海に来り遊ぶ多くの旅人も、富士山は何れの山ぞと敢て問はなくても、
一見して富士なることを知る」(『身延道の記』三戸亮著昭和11年承教寺発行より抜粋)
読書の秋です。車中で読書の喜びに浸ることができました。