明治軍人の雅懐

明治軍人の雅懐

乃木将軍と児玉将軍はお互いを許した軍人同志でしたが、お二人とも
漢詩を作られています。児玉将軍は藤園という号をもっております。

そんなお二人の間に漢詩の応酬があったんですね。あるとき、乃木将軍
が児玉将軍に示した七言絶句はこれです。

東西南北幾山河      東西南北 幾山河

春夏秋冬月又花      春夏秋冬 月マタ花

征戦歳餘人馬老      征戦歳餘 人馬老ユ

壮心尚未不思案      壮心ナオ未ダ思案セズ

これを児玉将軍に披露したところ乃木の目の前ですぐに和韻したそうです。

死屍幾満?山河      死屍幾満 山河ヲ?(ウズ)ム

乱後村童売野花      乱後ノ村童 野花ヲ売ル

春去秋来功未就      春去リ秋来ルモ功未ダ就カズ

沙場二歳不知家      沙場二歳 家ヲ知ラズ

幕末から明治期にかけては近代日本の勃興期でした。軍人たちに
こうした雅懐の応酬があったなんて驚きです。乃木は軍神として
最高の栄誉を称えられました。そして児玉大将は軍人政治家として
大活躍した人でした。いづれも神社に祭られています。