『人の言』から
露伴翁の書き物を読むと、学ぶところが実に多いです。今回は明治36年に書かれた『人の言』からの
抜粋です。
ある年老い徳すぐれたる僧に若き女の、如何様に心を持ち身を行はば、夫には良き妻となり、
舅姑には良き嫁となり、後の世には佛となり得るにや敎へさせたまへ、と尋ねければ、僧打
笑ひて、まこと殊勝の御尋なれば、秘中の秘にはあれど包まず御敎え申すべし、と云ひて、
扨女の面を睨み付け聲を勵(はげ)しくして、その問をよく忘れずに日に三度づつ自分で
問はっしゃい、と女が三日四日は耳も聾(しひ)るほど、雷の如くに呵(しか)りけるとぞ。
さすが名僧の一言ですね。千金の重みがあります。この教えを授けたのはきっと名のある
禅匠にちがいないでしょうね。