「モミの木は高くそびえて」

「モミの木は高くそびえて」

IMG_4129.JPG

先月末池田草庵先生の青谿書院を訪問しました。その時に購入した本です。草庵が八鹿(ようか)の
この書院を建てたのは35歳のときです。その後明治11年(66歳)でなくなるまで近隣の青少年を手始めと

して、晩年には西日本各地からその声明を慕い40人とも60人ともいわれる生徒たちの学問の場
となったのでした。この本はその講義録ともいうべき草庵の教えの精髄が簡略に述べられています。
ところで現代は学校教育現場において漢文が冷遇視されている時代ですね。なげかわしい時代です。

しかし、偉大な聖人の学問と修養から学ぶことは、じつに多いのです。じつはこの本は二年前に出版
されておりますが、現代にも十分通じる大切な教えのかずかずが掲載されております。

その中から少しだけですが抜き書きをして紹介します。さて、

題名のモミの木は現在でも当時の面影を保ちながら亭々と書院の側に立っております。門人たち
が書院を建てた記念樹として植えたものだそうです。以前はほかに松と樫があったようですが

すでに枯れてしまったそうです。モミの木は冬になっても落葉しないので、その青さを先生がこよなく
愛していたとか。

 机に対すれば、即ち筆硯整斉し、食に向えば即ち菜羹定位有り。

 此れぞ是れ当下切実、至近至易の学問なり  
 

 机に向かった時は筆や硯はきちんと整える。食卓についたときはきちんと配膳してあること。
これらの身近なことこそが、今すぐにやれて、自分を作っていくための学問である。

徳は性にそなわる、これを養いて後髙し。

徳(善い人柄)は生まれながらにして誰にも備わっている者だ。それを磨き、
育てていって、徳はだんだん高くなっていく。

静坐は実に是れ学問深切の功夫なり。

一人静かに座ることは、自分をみつめ、自分を育てるための大事な方法である。

草庵先生の日常は学問と思索と黙坐の実践でした。厳しく自己を律して貴い生涯を
送られたのでした。但馬聖人といまでも尊敬を受けられているだけの大人物でしたね。