漢詩は漢詩でも禅匠の詩は偈頌(げじゅ)といいます。江戸時代後期に名を馳せた風外老師には
「烏鵲楼高閑録」という漢詩集があります。
ご近所の秋の稲刈りも無事済んだ様子でもあり、しばらくぶりでその本を
取り出して、パラパラとめくっていたらこんな詩に出合いました。
病身有感
冥利擲來何勞神 名利を擲ち来たって 何ぞ神を労せん
常思淡薄不愁貧 常に思う淡薄にして 貧を愁へず
始知多病元良薬 始めて知る多病 元良薬なることを
養道也能得養身 道を養うはまた能く 身を養うを得ん
風外は知る人ぞ知る当時の禅の名匠でした。その会下からは
奕堂・鼎三・坦山といった宗門の傑物が輩出されたのでした。
宗門では近代随一の画家としても有名でいまでもその作品群は
珍重されています。
この詩を読むと老師は生来病弱な身であったことが知れます。
平易な漢詩ですが、結句にはさすがに老師の真骨頂を垣間見ることが
できます。
タイトルにたこ風外と書きましたが、その理由は・・・。
掛け軸作品などで書いた署名の風という字の格好がたこの姿に似ていることから
そのようなあだ名がついたのです。