先日からの続きです。発菩提心はつづめて発心(ほっしん)といいますが、
この清らかな心を妨げるのが名利の邪念であると申しました。このもとはなんであるか。
高祖によれば「ただ世間の生滅無常を観ずる心も、また菩提心と名く」と龍樹祖師の
言葉を引用しております。
呼吸すればこそ私たちの生活が成り立っているわけです。その呼吸は健全に息を
してくれているから、食べたり飲んだり眠ったりということが不自由なく全うできています。
世間の無常を観ずるというのは、こうした事実をキチンと自覚すること。
「それ無常を観ずるとき、吾我の心生ぜず」とも述べられております。
呼吸が止まれば万事休すです。そうした冷厳な事実を観察してみますと、
あらゆるものは変化をしつづけており、仏教でいう諸行無常そのものであります。
おれさえよければ、全部よし。そんな考えは諸行無常と正反対の事実を無視した
浅薄な態度といえましょう。一日の中でもそうですが、昨日は朝から曇り空であり、
しばらくして雪となりました。午後二時から三時にかけては大雪となり、車ででかける
用事をすませて境内の坂道を登ったものの、大雪に阻まれてしまい途中で前進できなく
なり、坂の途中で車を置いたまま玄関まで辿りつきました。しかし、
六時過ぎからはさしもの大雪も雨となって今朝は雪解けの雨が続いているのです。
あらゆる存在もまた思想・考えも例外なく瞬間瞬間変化をしております。諸行無常はこうした
事実をこの四文字に表現しているのです。ちっぽけな名利の邪念を妨げるのを
退治するにはこの特効薬が必要不可欠ですね。