風外老師還暦の漢詩

  老僧今年六十一   老僧今年 六十一

  報恩事業滴無成   報恩の事業 滴も成る無し

  祥雲淑気春風裏   祥雲の淑気 春風の裏

  挙首空見白米城   首を挙げて空しく見る 白米城

風外本高老師還暦の時の感懐です。江戸時代も後半になり幕末に差し掛かった頃に
活躍した禅匠です。69歳で亡くなりましたがその門下から出た奕堂・鼎三

坦山など明治期の曹洞宗を代表する弟子を育てたことで知られています。
転句 は正月を迎えた肌寒い気候を表現しています。老境に入っても
満足のいくような境涯にたどり着けない自分であるというのが承句の表面上
の意味ですけれど、実際には大いに宗風を振って弟子養成の実績を
あげていた時期です。老師一流の謙遜の言葉ですね。

参禅の徒弟たちの指導の余暇には優れた画を多く描かれました。