初めての万燈供養会

医王寺の万燈供養について

 御参詣の善男善女のみなさん、こんばんは。

 

 このたび拙寺では万燈供養という法要をすることになりました。我が国における

万燈供養の歴史は優に千年を超えておりますが、わが曹洞宗においては明治時代

から始まったことなので、実際には全国的な広がりをもった法要とは申せません。

 しかし、いわき市平の夏井川べりで毎年夏のイベントとしての夏井川に灯篭を流す

流し灯篭の供養は盛大に行われており、夏の風物詩として定着しております。

 

 この法要では本堂に供養を受ける御先祖の戒名や代々の精霊を書き込んだ

紙灯篭(蓮華型)を須弥壇に飾ります。境内には竹の灯篭や四角の灯篭が参道

を飾るように並べられております。ちょうど、お盆の最中でもありますから
あたかも御先祖さまの通り道をすてきに荘厳(しょうごん)されたもののようです。

 

お盆はご先祖様の精霊が年に一度慣れ親しんだ実家に帰られるという民間行事です。

この良い時期に御先祖の遺徳を思い、報恩感謝の念を自覚するという目的で今回の

万燈供養の儀式が行われます。まだまだ盛夏ではありますけれども、夏の一夜に亡き

ご先祖を偲ぶよすがになることを祈念しております。

 

万燈供養の教えは古い経典に出て来る「貧者の一灯のお話」が原型となっております。

またお釈迦様の最後の教えに自灯明・法灯明を強調されたことなどもあり、灯明の

灯りは仏教徒にとりましてお釈迦さまからの身近な教えとして古来より親しまれて

きております。灯明のささやかな明かりにはお釈迦さまの教えが籠められているのです。

 

   なお、本堂正面の大間には大きな角灯篭が安置されております。囲みに使われた

組子が二枚、それから鶴と松の飾り障子がありますが、これは五年前の東日本大震災で

家屋浸水の被害にあわれた家が防波堤拡張工事のために取り壊されることになった

その時の遺品であります。欄間や飾り障子があの大惨事の記憶をとどめるかのよう

にとの思いも込めて制作いたしました。

 

どうか、真心あふれる信者さんたちの一灯がこれから百千そして万燈として大きな

輝きになりますことを念ずる次第です

     平成28年盂蘭盆万燈会            

                        医王寺住持 村上徳栄