山里は 松の声のみ ききなれて 風吹かぬ日は さびしかりけり
これは明治の歌人太田垣蓮月尼の歌です。昨日の稲妻のピカッと光った瞬間は
みることもなかったものの、嵐のような集中した雨音を耳にしながら坐禅を
しておりました。春夏秋冬かわらぬ”四時の循環”を実感した次第です。
渡部昇一昇一先生(上智大学名誉教授 86歳)が亡くなられてから新聞雑誌などで
先生の著述が矢継ぎ早に出版されております。
英語学者のとして高名な学者でしたが、我が国の伝統や現在の政治の事どもについても
自信をもって論陣を張られて国民の蒙を開いていただいた恩人です。文句なしの碩学であり
あまたある著述の中でも、幸田露伴の「努力論」を紹介されたことには、わが意を得たり
との感を強くして、感動したものです。尊い八十六歳の一期でした。
木南先生の『楠葉だより 自然と人生』を久しぶりにめくっていたら、
貝原益軒の漢詩が目にとまりました。
幼求斯道在卑懐 幼ニシテ斯道ヲ求メテ卑懐ニアリ
徳業無成夙志乖 徳業成ル無ク夙志乖ク
八十五年為曷事 八十五年曷事(ナニゴト)ヲカ為ス
読書独楽是生涯 読書独楽是レ生涯
渡部昇一先生と貝原益軒先生お二人の読書の境地ははるかな時間を超えても同じものなのでしょう。