『泥舟遺稿』を読む

地球的規模の武漢ビ-ルス禍で暗い報道が続いておりますが、早期の収束を望むばかりです。外出もままならぬ、
ということで読書に向かう好機ととらえるのも良い考えではないでしょうか。
 ここに紹介した写真は幕末の槍術の名人とされる高橋泥舟『泥舟遺稿』(明治36年発行)の復刻版に掲載
されているものです。

     畏之如蛇蝎 悪之如悪臭  泥舟逸人

    (これを畏れること蛇蝎の如し、これを悪むこと悪臭のごとし)
    悪はにくむとよむ。怠はおこたるという意味。

幕末三舟の書のなかでは、高橋泥舟が一番知られていないですね。でも、その遺稿を拝読してその境涯の
深さに驚きました。槍術師範ですが、漢詩・和歌そして独特の書だけでなく、心の丈の深い人物でした。漢詩には無欲・清高の人柄をしのばせる作が多いです。泥舟の妹を嫁にした山岡鉄舟は義兄である泥舟を心から尊敬していたようです。此の彼の書はいつもの練達の読みにくい書でなく、きっちりと楷書で
かかれており、謹厳な武士の姿を思わせます。さすが、歴史的偉人だと感銘しました。