謡曲熊野(ゆや)に見る春景色

週末は万朶の桜を愛でる絶好の機会でしたが、天気予報が当たってしまい、
土・日の花見は午後からの雨で興ざめとなってしまいました。

昨夜の春嵐には予想以上に驚かされました。さて、能楽界では昔から
「熊野松風米の飯」などと言われています。春の定番人気曲は「熊野」、
秋は「松風」とされ、今に至るまで再三上演されている名曲です。

清明となった晩春にこころに響く詞章を詠ずるのも一興でしょう。

  草木は雨露の恵み 養ひ得ては花の父母たり 
  況や人間に於いてをや

また

 四条五条の橋の上 老若男女貴賤都鄙
 色めく花衣 袖を連ねて行く末の 雲  
かと見えて八重一重 咲く九重の 花盛り
名に負ふ春の景色かな

京の都東山の春景色を愛でながらのそぞろ歩きを想像して、あと
数日後には潔く散ってしまう桜を惜しむのもまたこの春ならではの

興趣に違いありませんね。