大拙居士送別の詩

「閑雲水忙」に大眉老師16歳の詩が載っているので紹介しましょう。

送鈴木大拙居士遊学米洲

万里波濤君遠辞去    ばんりのはとう 君とおく辞す

丈夫臨別奈須悲     じょうぶ 別れに臨み なんぞ悲しむをもちいん

春光如海米洲土     春光うみのごとし 米洲のど

正是黄鶯出谷時     まさにこれ 黄鶯のたにを出るとき

16歳でこれだけの漢詩を詠んでおられます。早熟であったことは
確かでしょう。あの当時米国遊学もなかなか困難なことであったで

しょうし、その困難を乗り越えて将来の雄飛を期待した結句がきいて

います。

昨夜は雨でした。同じ本にこんな漢詩がありました。

雨滴声々夜色沈  うてきせいせい やしょくしずむ

梅花隔戸暗香侵  梅花戸をへだてて 暗香おかす

青燈以外寥無侶  せいとういがい 寥として侶(とも)なし

古教照看千古心  こきょう しょうかんす せんこのこころ

外は雨がしとしと降り続いており、庭の梅花はほのかに
部屋まで香ってくるかのようだ。部屋には灯りがポツンとあるだけで

知人の訪問もない。こんな夜は古典に親しんで古人の境涯を追慕

したいものだ。そういう意味でしょう。結句がいいですね!