大智偈頌を開く

今月も残すところ二日のみとなりました。これから隣寺の晋山式にでかけます。
住職の退任式もあります。先輩住職がまた一人退任して後任の若い住職の

正式な就任式が盛大におこなわれるのです。わたしもいづれ退任する時期が

来ることを思うと、他人事には思えません。天気は崩れていないので儀式も
順調に進むことでしょう。世間では五月の大型連休で行楽のニュ-スがずいぶん

報道されています。わたしはしばらく宗典を覗いていなかったので、今日は大智禅師

の偈頌(げじゅ)を取り出しました。昔の禅僧が偈頌を覚えるためにこの「大智偈頌」
は必須科目だったとか。七言絶句の漢詩を朗読したり、抜き書きをしたりしたことも

思い出となってしまいました。その頃からときおりこの本を開くことがあります。きょうは

そのうちの「袈裟」と題する七絶を紹介してみます。

霊山付属重如山  りょうぜんのふぞく おもきこと やまのごとし

四七二三擔一肩  ししちにさん いっけんに になう

直道本来無一物  じきに ほんらいむいちもつと いうも

未応容易與他傳  いまだ まさに よういに たに うたうべからず

仏教僧の制服である袈裟は一肩・二肩(いっけん・にけん)と枚数を数えます。
霊山は霊鷲山(りょうじゅせん)のことで、釈尊説法の場所。そこから代々弟子たちに

釈尊の唱える仏法が伝えられてきました。四七は掛け算すると28となり初代の
お釈迦様から二十八代目の祖師はボダイダルマ大師です。大師によって禅が

シナに伝えられて六代目の祖師が慧能禅師です。二かける三で六となります。
四七二三で仏法が釈尊から禅が正当に伝えられたことを意味します。

その慧能禅師にある有名なことばが「本来無一物」として今日まで禅林で伝えられて
おります。結句は祖師はなにもないといわれておるが、そのなにもない無一物を

伝えるのはそう簡単にはまいらない。このへんが大智禅師の見識ですね。いい

結句です。この偈頌をお唱えしながら式に臨みたいです。