冷暖分明只自知 冷暖 分明(ふんみょう)に只自知あるのみ
男児豈可被人欺 男児あに人に欺かるべけんや
莫将日本眞金貴 日本真金の貴きをもって
博易大唐鍮子歸 大唐の鍮子(ちゅうし)に博易して歸ことなかれ
物の真実、自己の真実というものは、他のはからい
智識などで知るこのできるものではない。冷暖とい
うものは自分の膚身で、じかに体得せねば分からない
ように、自己というものは、坐禅によって、はっきりと
自覚されるものである。
だから男児たるものは、宜しく他人のはからいでだまさ
れるようなことがあってはならない。
もしもそうしたなら人間台なしとなる。
そこで、貴僧は、日本で得た貴い本当の金を手に
しながら、これをわざわざ大唐国へまで持っていって、
真鍮ととりかえてもってくるようなことがあってはすま
されないことでありますぞ。(飯田利行訳)
この偈頌の題は「僧の大元に之(ゆ)くを送る」です。
大智禅師のこの詩はなかでもよく知られたものです。
わが宗門で漢詩を覚えるときには必ず目を通しておく
べき必須の詩集です。
鎌倉時代にあってすでに我が国は「日本」であることを
自覚しておられたことがわかります。日本国と諸外国に
正式に表明したのは明治時代ですが、それよりはるか
以前に「我が国は日本というのだ。」そんな気概がでて
いますね。とてもいい詩です。
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