「大智偈頌」の世界

 

冷暖分明只自知  冷暖 分明(ふんみょう)に只自知あるのみ

男児豈可被人欺  男児あに人に欺かるべけんや

莫将日本眞金貴  日本真金の貴きをもって

博易大唐鍮子歸  大唐の鍮子(ちゅうし)に博易して歸ことなかれ

物の真実、自己の真実というものは、他のはからい
智識などで知るこのできるものではない。冷暖とい

うものは自分の膚身で、じかに体得せねば分からない
ように、自己というものは、坐禅によって、はっきりと
自覚されるものである。

だから男児たるものは、宜しく他人のはからいでだまさ

れるようなことがあってはならない。
もしもそうしたなら人間台なしとなる。

そこで、貴僧は、日本で得た貴い本当の金を手に
しながら、これをわざわざ大唐国へまで持っていって、

真鍮ととりかえてもってくるようなことがあってはすま
されないことでありますぞ。(飯田利行訳)

この偈頌の題は「僧の大元に之(ゆ)くを送る」です。
大智禅師のこの詩はなかでもよく知られたものです。

わが宗門で漢詩を覚えるときには必ず目を通しておく
べき必須の詩集です。

鎌倉時代にあってすでに我が国は「日本」であることを

自覚しておられたことがわかります。日本国と諸外国に
正式に表明したのは明治時代ですが、それよりはるか

以前に「我が国は日本というのだ。」そんな気概がでて
いますね。とてもいい詩です。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%99%BA