「秋夜四録」より

秋は晝よりも夜こそをかしけれ。されど其の夜のおもむき、春の夜の
やはらかみ有りといふにも無く、夏の夜のいさぎよさありといふにも無く、

また冬の夜のさびあるにもあらず、たゝ秋の夜はおのづから是れ秋の
夜にして、必ずしも心悲(うらがな)しとのみにはあらざれど、強いて

言はむには猶然(しか)言はむよりほかに辞(ことば)も無かるべきにや。

(『露伴全集』第三十二巻収録)

自然の情趣を味わううえで露伴の名文はとても有益ですね。ときおり

書棚にある全集を開いてみると小品ですが、こんな素敵な

文章にであうことができました。現代の作家たちにこうした名文を望む

ことは無理でしょうが、幸いなことに格調高い美文を味わうことができる

のは嬉しいことではあります。

https://www.lifehacker.jp/2014/01/140124book_to_read.html