人間世界に仏教は必要か?

表題のような質問に原坦山老師(1819~1892、文政2~明治25)は平易にこう説明されています。

問、佛教の人間世界に必要なるは何の理に出る乎。

答、人間の智力、最妙至楽の心法を尽す能はず、所謂三苦八苦等の苦悩を受く、釈迦氏之を

  悲愍し種々の方法を設け、其苦悩を解脱し、妙楽無為の心法を得せしむ。
  其尤も必要なることは十悪を止め十善を行せしめ、之を以て自他を利益し、
  平等至楽の眞浄世界と為すにあり、云々(明治14年4月16日講義)

およそ人間に必要な最高の手段は心の解決であるけれども、それがなかなか釈尊の得られた
ように上手くはいかないのが現実である。しかし、卑近に説明するならば、「十悪を止め

十善を行なう」ことこそ自他ともに大切なことである。そういう趣旨であります。江戸期の慈雲
尊者の有名な「十善法語」はそれを縦横無尽に説かれた書物です。機会があれば読まれると

いいでしょう。