今月5日には暦の上で立夏となりました。爛漫たる桜を見送ると
菖蒲や杜若の季節となります。
謡曲「杜若」は在原の業平卿作「伊勢物語」が主題です。東下りして
京の都に妻を残しての旅路です。
その中の一節には「実にや光陰とどまらず。春過ぎ夏も来て。草木
心なしとは申せども。時を忘れぬ花の色。」とあります。
春が来た、暖かくなったと行楽しているうちにいつのまにか時節は
移ってしまって立夏となった。そんな感慨が述べられています。
また、美しく咲いている杜若をみて、ある人がかきつばたという五文字
を句の頭に置いて、旅の心を読めと言われて業平(なりひら)が読んだ句。
唐衣(からごろも)きつつなれにし妻しあれば、はるばる来ぬる
旅をしぞ思ふ
この歌も古来有名な和歌ですね。午後からはしっとりとした雨で静かな
春を味わうのも一興です。