「随聞記」の世界

「随聞記」というと、宗門では永平寺二祖孤雲禅師が初祖道元禅師から伺った修行上の
要点を記録した書物を指します。仏法を体得するうえで孤雲禅師が疑問とするところを師匠である

道元禅師に問いただし、そのときの師匠の回答を述べた文章です。「正法眼蔵随聞記録」(しょうぼうげんぞう

ずいもんき)というのが正式な題目です。鎌倉時代に記述されたものですが、出家した僧侶のみならず
在家であっても修養に心掛ける人にも大変有益な書物として、現在まで広く読み継がれています。

大東亜戦争当時の学徒出陣で戦場に駆り出された若人たちはこの「随聞記」や親鸞上人の

言行録として名高い「歎異抄」をポケットに入れて、出征したといわれますね。真剣に人生を考えざるを
得ない状況に置かれた当時の若人たちの心情に強く訴える力がある書物でもあります。

「随聞記」はですから現在のような国家存亡の時ともいえるようなリスクの高い現在の国際環境にあれば
なおのこともっと読まれてもいい書物だと思います。