「弓と禅」の著者とは?

言わずと知れた名著「弓と禅」はあまりにも有名である。弓道界における
古典ともいえる存在となっているのではないだろうか。

その著者であるオイゲン・ヘリゲルはドイツの哲学者であるが、その全体像を
しるのに都合のいい本はいまだかつて我が国においては出版されていない。

そんなことを気にしていたときに出合ったのが「禅という日本丸」(山田奨治著
平成17年弘文堂出版)。いま、小名浜の名店街で古書展示即売会を開いて

いて、そのさいに入手したことで、ヘリゲルという人物像を知ることになった。
弓道と禅が密接な関係がある。というけれども、禅の古典などにはほとんど

それとの関連性を深く裏付けるような逸話なども知られることはまれであり、
そのことの疑問を長い間わたしは持っていたのである。この著書により

そんな疑問を解決すてくれたのが、この本である。ヘリゲルが日本文化の精髄と
信じ込んでいた禅の世界はヘリゲルの弓の恩師阿波研造範士の指導による

ことが多いが、阿波についての考察も山田著によって具体的実証的に記述
されていて、大いに役立った。

ヘリゲルがドイツに帰国したころはナチス全盛時代でユダヤ人虐殺が
当然視されていた。じつはヘリゲルも例外ではなく、ナチ党員であったこと

などもこの本で指摘されている。日本文化が海外に紹介された時の文化

受容の仕方などで示唆することの多い本が「禅という日本丸」である。