エックハルトの神秘主義

「弓と禅」の著者ヘリゲルは日本文化に興味を抱く前にドイツの神秘主義者・
キリスト教神学者のマイスタ-・エックハルトに傾倒していたらしい。

エックハルトは13世紀、つまり中世ドイツ時代の神学者であるがその教義

は「唯一絶対である全知全能の神との合一とその神性を説いた」といわれる。
この彼の主張は死後キリスト教世界で異端宣告をうけて、著作の発刊・配布

が禁じられた。しかし教会からの異端宣告にもかかわらず、その影響は
根強く近現代の哲学思想にも影響をおょぼしているとされる。

ヘ-ゲル、ショウペンハウア-そして二-チェなどにも影響を与え我が国
では西田哲学の京都学派の西谷啓治や上田閑照なども論文を発表している。

臨済宗などではよく知られた神秘思想家であるが、曹洞宗では彼に言及
する論文やまとまった著作などはほとんどないようだ。

ヘリゲルが東北大学にくる決断をするには、当時ドイツにいた日本人留学生
から得た日本文化の知識が中心となり、なかでも親しく付き合いのあった

大峽秀栄の影響が見逃せない。大峽は釈宗活(1871~1954)に参じた旧参
の居士で将来を嘱望されたいたが恩師の釈宗活より早く死亡してしまった。

釈宗活は釈宗演の弟子で居士禅を弘めた老師である。釈宗演は鈴木大拙
を伴って世界宗教者会議に参加するため渡米した著名な鎌倉円覚寺の

老師である。夏目金之助(漱石)も老師に参禅した経験があり、その葬儀の
導師は釈宗演がした。

世界思想をざっと眺めると中世の13世紀には西洋ではトマス・アクィナス
(キリスト教神学者)やエックハルト我が国では道元が知られる。洋の東西で

世界思想に多大な影響をあたえ続けているという意味ではこの中世時代は

特別深い意味を持つものといえるだろう。