仁者天下之公

今年の読書始めは「易・近思録講義」としました。昨年末から少し鶴読み始めました。哲学者として

一世を風靡した広島文理科大学教授だった西晋一郎先生の講義録です。昭和10年4月から11年3月

の間に講述されたものの筆記を当時学生だった本間日出男氏によるものを、先生が校閲され、昭和

15年1月に出版されたもの。(同書の後記 木南卓一)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E6%99%8B%E4%B8%80%E9%83%8E

その後西先生を慕う木南卓一先生により平成9年に渓水社より出版されたものを小生は所持しており、

そこからの抜粋を紹介したいと思います。

仁は天下の公、善の本なり。

 仁は天下の公と云ってある。此の公というのは万物の本体という意味になる。自分と他人という

差別がない。万物一味ということになる。それが善の本である。万善の由って生ずる所である。由って
生ずるということは、ある者から出て来るという風に物質的に考えてはならない。

そう考えるから流出説が出て来るのである。本とは、個々の事象の根本にあることで、泉から

出て来る様に物が流れ出るのではなく、事々物々に其のものたらしめるものが具わっておる。
それが善の本である。(「近思録道体類」)

儒教特に宋学の根本的思惟は西先生によれば「近思録」に一番はっきりその特徴がでているとのこと。

それとは別にこの冒頭の「仁は天下の公・・・」と先生の説明文を何度も繰り返しながら読むとなんとなく

気分が爽快になります。さすが昭和天皇に論語を講義された大学者だと頷きました。