先日紹介した永平高祖御垂訓には「発菩提心」(ほつぼだいしん)の一章があります。
発菩提心は別に道心とも言われます。悟りを求める情熱のことです。
仏法を信じて修行するにはどうしてもこの菩提心がなくてはなりません。よくあの和尚
は”道心堅固”である。その意味するところは。自分の決めた目的を完成させるためには誰が何と
言おうとその方向に邁進する。そういう情熱のほとばしりを持った和尚を褒める言葉です。
世間でもその意味合いは同じでしょう。人様より抜きん出た実力を発揮した方には、それに従事する
職業の如何ににかかわらず道心を強くそして長く維持したからこそそれ相応の結果を受け取ることが
できたと思うのです。仏道においては発菩提心こそが大切です。一度は決心しても
それを度々自覚して生活しないと、すぐに怠けてしまうものです。なんだかんだ自分の
都合でせっかく抱いたりっぱな気持ちを遠ざけてしまう。こんなことは日常茶飯事であります。
とくに仏道を成就するうえで妨げになるのは”吾我名利の念”であると高祖道元禅師はこの
章でハッキリと断言しております。「おれの得になれば、なんでもいい。自分さえよければ
なんの文句もない。」そういう観念の本には名利の念が必ずその本人に巣食っている
ものなのだ。だからその思いを捨てなさい。そういう御教えです。とはいうものの
なかなかどうしてこれは難問ですね。世間さまに認められる存在になりたい。
そういう想いからはるかに遠ざかって一途に仏道に専心することが発菩提心ということなんですね。
この章を読むたびに高祖大師の慈悲心の深さを感じさせられております。