被(ひ)と聞いてすぐに「あ、あれか」と思える人はほとんどいないでしょう。禅宗の専門道場では「人の
身体または物の外部や全面を覆うに用いるものを総じて被という。被衣。法被・衲被・被布などの類の如し」
(禅学大辞典)とあります。薄手の掛布団と思えばいいでしょう。いま私が言う被は坐禅中に全身を
覆ってくれる大きめの布風呂敷を想像されるといいと思います。
寒中の朝四時とか五時から坐るときは室内は冷え込んでおります。そんなときに被を使用するのです。
専門道場ではそれなりの暖房がありますが、冬になると私はインドの和尚が身に着ける黄土色の衣で
代用しておりました。このほど、それを見かねたのか、家内が坐禅用の被を制作してくれたのでした。
サイズは縦140㎝横180㎝ほどの布です。裏地もつけてもらい着心地というか、とても体にしっくりきて
いい具合です。家内独りでは裁縫も無理なので親しいお友達の助けをもらって、完成にこぎつけました。
衣財は長年着古した上下の作務 衣(さむえ)という禅僧の仕事着をほどいたものとアイヌ刺繍をした布を
使ったのです。すでに何年もきていた古着なので、体にしっくりきて違和感はまったくありません。
この冬のすてきな家内からの贈り物になりました。今月で満65歳になるわたしの新しい宝物です。