もののあわれは・・・

もののあはれは秋こそまされと人ごとに言ふめれど・・・「徒然草」とあるとおり、秋の風情情趣はいまこの
季節が上乗の日々です。

さわやかな秋の風に吹かれて、すすきの穂は白く光ります。なでしこや、をみなえしやききょうの花は、
みるからにかはいらしい姿で咲いています。

空は、すみからすみまで、まっさをに晴れ渡って、ときどき、「ききき。」と、もずが声高く鳴きます。夜は
草むらで、松虫や、すず虫が、美しいねをたてます。

すきとほった秋の光をあびて、きれいな空気を胸いっぱい吸ふと、みもこころも、ひきしまってきます。
稲の穂が出そろって、やがて、きんいろの波が、たんぼ一面おほふやうになります。そろそろ、稲かり

が始まります。柿の実はあかくなり、みかんは黄色くなり、野山の木という木は、黄にくれないに、美しく
色づきます。田や畑では、みんな、取り入れにいそがしく、ひたひに汗をにじませてはたらきます。

いつのまにのぼったのか、鏡のような月が、あたりを明るくてらします。きれいにすんだ秋の月に

向かふと、心の底まで見とほされるやうで、かくしだてなどは、できないやうな心持になります。秋は、
心もからだも、きりっとひきしまって、気持のよい時ですから、からだをしっかりときたへ、また、本を

読んだり工夫したりするやうに心がけましょう。(漢字の一部を現代表記にしました。初等科修身 一 秋の項)

初等科の修身の教科書に掲載された「秋」の文章です。大人が読んでもいかにも秋の良さが表現されています。
昔はこのような名文を子供たちの脳裏に沁みみこませたのですね。美しい日本の秋の景色を思い浮かべること

ができます。(親子で学ぶ偉人伝巻一参照)